近隣市の地域ブロック内70校以上が出場して10区間30Km 超の距離を走る駅伝大会に出た話の続き。
この駅伝大会は箱根駅伝のように公道を県警がランナーの通過に合わせて交通整理、道路封鎖と解除をしながら、白バイの先導と伴走有りで運営されます。
上位校10人の3000mの平均タイムは9分30秒。トップランナーは全国大会入賞者で8分40秒。エース区間は上位校は9分0秒前後のランナーがエントリーします。
たー君が走る区間は10区のうちの中盤から終盤に入っていく区間です。
たー君が走る区間は通う中学校の近くです。各ランナーの持ちタイムで1区から通過タイムが計算されて、各区間の通過予測時間が大会HP に公表されます。それを目安に通過20分前に沿道に行きました。そうすると陸上風の格好だったり、保護者と分かるギャラリーがまばらにいます。
応援する場所は、次の区間の中継所の手前500m のところにしました。
直線でなだらかな登りの頂上でかなり先から中継所周辺まで1キロくらいコースが見渡せる場所です。
通過予測時間が近くなっていくと、中高生だったり、大学生ぐらいのギャラリーが増えてきました。出場校のOB だったり、友達の応援のようです。
次第に、近所の家から小さい子だったり、おじいちゃんだったりどこから湧いてきたのか分からないように出てきました。
気づくと周りはギャラリーがいっぱい。
コースを向こうまで見渡して見ると、沿道には花が咲いたようにギャラリーで埋められていました。中継所あたりまで人垣ができています。
しばらくすると広報車が前を通り過ぎて1位から10位までを走っている学校名をアナウンスすると、どよめきと歓声が共鳴して耳を震わせます。
「ビッグレースだ」
私がママに言うと、ママは肩を震わせていました。完全に雰囲気に呑まれています。
娘のぴょん子とじゃす子はただごとじゃない空気に興奮してソワソワしています。
警察官が拡声器で、
「道路封鎖しまーす」
と言うと自動車が止められてしんと静まって、向こうから白バイ2台がゆっくり静かに向かってきます。だんだんと拍手が聞こえてきて、トップ校のランナーが見えてきました。
拍手と「がんばれー」の歓声が聞こえてきます。
1位のランナーが目の前を苦しそうに真剣に前だけを見つめて走り過ぎていきます。
私は自然と拍手をしていました。
2人、3人と通り過ぎていくと、「がんばれー」「もう少しだぞ」知らずのうちに、見ず知らずの子に声援です。
目の前を中学生ランナーが30人、40人真剣な顔でひたむきに走っていく姿を見ているとだんだん涙があふれそうになってきます。
50人ほど過ぎたところで遠くにたー君の姿が小さく見えました。数100mも先からたー君に向けられる拍手や「がんばれー」と暖かい声援が聞こえてきます。
その様子を見ていると、ありがたくって感極まっていよいよ涙が止まりません。
ママは、「わたし、もうダメ。胸がつぶれそう」と号泣です。娘2人はお待ちかねとワイワイしています。
たー君が近づいてきます。我が子の走る姿がはっきり見えてくる距離まで近づくと、中学校名の入ったタスキが目に入ってきます。
我が子の走る姿から、1区からつないできた学校名の入ったタスキを運ぶランナーの姿に変わります。
ランナーはみんなタスキを切らさないように、次につなげるためにひたむきに走ってるのかと思うと、「タスキは重い。すごく重い」と実感しました。
手元の時計で1位のランナーが通過してから10分くらい、繰り上げスタート回避してなんとかタスキをつなげられそう。
目の前を通り過ぎるたー君に、
「タスキつながるぞ!粘れ!粘れ!」
と、声をかけました。ママもなんか言ってましたが、声になっていません。
走り去ったたー君を見ていると、少し先に沿道から身を乗り出しそうなおじさんが、大きい声で、
「間に合うぞー!最後だ!しっかり!」と激励してくれました。
そして中継所前の急な登り坂を足が重そうに走るたー君が歓声に包まれながら中継所に入っていきました。タスキを次のランナーにつなげられました。
その後、コースに目を戻すと歓声が一際大きくなっていました。
大会運営者がマイクで「最終ランナーです」と言っています。
沿道から、「がんばれ!がんばれ!」「最後まで!しっかり走れているぞ!」とエールが最終ランナーに向けられます。一番大きな声援でした。
最終ランナーが中継所へ入って行った瞬間、警察が
「道路封鎖、解除しまーす」
と言って、沿道からため息みたいな音が漏れたのが聞こえました。
その後、ママが、
「こんなことってある?」
「保育園も小学校もずっとかけっこ最下位だった子が、堂々と走ってたよ・・・」
「あんなに声援をたくさんもらって・・・信じられない・・・」
50m走で下を向きながら足が前に出ていかないで苦しそうにビリばかりを走っていたのに。
私も信じることができない不思議な気持ちでした。
見てはいませんが、タスキを前のランナーから受けて3キロの間、たくさんの沿道のギャラリーの前を声援を受けて走ってきたのかなと想像すると、ビッグレースを走れるだけで幸せだなと思いました。
いろんな人から、今回の駅伝大会を走れることは、名誉だとか、幸運だとか、光栄なことだとか言われましたが、その意味が分かって、今回の機会を掴んだたー君はじめ学校の先生、いろいろな人に感謝の気持ちが湧いてきました。
すっかり駅伝ハイになってしまった後の話しは、また後日。